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鳥取地方裁判所米子支部 昭和41年(ヨ)3号 判決

申請人 加藤静己外二名

被申請人 米子作業株式会社

主文

申請人らがいずれも被申請人に対し雇傭契約上の権利義務を有することをかりに定める。

被申請人は昭和四〇年一二月三〇日以降本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り、申請人加藤静己に対し金一万六八五二円、同松本時正に対し金一万五八七七円、同中田武美に対し金一万六八一一円をかりに支払え。

申請人らのその他の仮処分申請はこれを却下する。

訴訟費用は被申請人の負担とする。

(注、無保証)

事実

(申請人らの申立及び陳述)

申請人ら代理人は「申請人らが被申請人に対し雇傭契約上の権利義務を有することをかりに認める。被申請人は昭和四〇年一二月二九日以降本案判決が確定するまで申請人加藤に対し月額金二万四一二九円、同中田に対し月額金二万五五二〇円、同松本に対し月額金二万六三五九円をかりに支払え。」との判決を求め、仮処分の理由として次のとおり述べた。

一  申請人らは、全員被申請人会社(以下「会社」という。)の従業員で、かつ、右従業員一四六名を以て組織された紙パ労連米子作業労働組合(以下「組合」という。)の組合員であり、申請人加藤は、右組合の執行委員長、同中田は、同副執行委員長、同松本は、同書記長であるところ、会社は、昭和四〇年一二月二九日、申請人らが全員就業規則第七九条第四号、第八一条第七号に所謂「服務規律を紊し、かつ、その情状が重い場合」に該当するとして懲戒解雇処分(以下「本件解雇処分」という。)に付する旨通告して来た。そしてその解雇事由とされている事由は、被申請人主張の別紙解雇事由のとおりであり、申請人のこれに対する認否は、別紙解雇事由に対応する申請人答弁欄記載のとおりである。

二  かりに、右解雇事由がいずれも認められるとしても、これらはいずれも別紙解雇事由に対する答弁のとおり申請人らが正当な組合活動としてなしたものであるから、これを理由とする本件解雇処分は、労組法第一条に違背し、同法第七条第一号に該当する不当労働行為であつて無効である。

これに関し、本件解雇処分の背景をなす被申請人会社における労使関係は次のとおりである。被申請人会社は、昭和三八年一月一日、それまで申請外松井組が日本パルプ工業株式会社(以下「日パ」という。)米子工場から請負つていた業務を代わつて引受けたものであるが、そもそも、旧松井組が日パ米子工場との請負契約を解除されて解散するに至つた主たる原因は、経営不振を表向きの理由としているが、実際は申請人らが属していた旧松井組労働組合の争議行為を日パ米子工場が嫌悪し、旧松井組経営者に労務管理の手腕なしと評価したことにあつた。そこで日パ米子工場は昭和三七年八月以前から同工場と密接な関係にあつた日本通運株式会社(以下「日通」という。)と協議し被申請人会社を設立するに至つたもので、会社は、その設立の当初から組合活動弾圧の任務を負つていたものである。ところで会社の事業目的は、被申請人主張のとおりであるが、右事業目的から判然とわかるように、会社の事業の殆んどは日パ米子工場の作業であり、その作業場所も殆んど同工場の敷地、施設内である。そしてその作業はいわば同工場におけるパルプ製造工程の附随的作業を担当しているので、争議によるその作業の遅滞が日パの工程にもある程度の影響を及ぼすことは已むを得ず、同社もこれに無関心であり得ないが、反面その作業が機械的単純労働であるため代替労働力を容易に調達できることは、会社が同工場に対してもつ従属性、劣弱性を示すものであり、会社が同工場の指揮、圧力に抗し得ず、その顎使に甘んじ、組合の正当な活動、従業員の労働条件を抑圧し、不当労働行為を敢行させる背景となつている。

以上からして本件解雇処分も正当な組合活動を弾圧しようとする意図の下になされた不当労働行為であることは明らかであるというべきである。

三  かりに右主張が採用されないとしても、被申請人主張の解雇事由のうち昭和四〇年九月以前に発生したものについては、以下の理由により本件解雇処分における解雇事由となり得ない。

(一)  本件解雇事由は、申請人ら主張のとおり、その殆んどすべてが争議中に争議に関して発生したものであるところ、昭和三八年の春闘から昭和四〇年の春闘までの間に行なわれた争議については、各争議終了時に、会社と組合との間に、当該争議中に発生した事由に基づいては互いにその民刑事上の責任を追及しないとの協定が成立しており、同年九月以前の争議行為については右協定の適用がある。

(二)  かりにそうでないとしても、争議妥結に際し、また妥結後長期に亘り、会社から何らの責任追及もなされなかつた事由については、後日これを理由に懲戒処分をなすことは特段の事情がない限り許されないところ、昭和四〇年九月以前に発した事由はまさしくこれに該当するというべきである。

四  本件解雇処分が無効である以上、会社は、申請人らに対し本件解雇処分を通告した日である昭和四〇年一二月二九日以降も引続き給与を支払う義務があるところ、申請人らの本件解雇処分通告前三ケ月間の給与は次のとおりである。

氏名

給与明細

昭和40年一〇月分

同年一一月分

同年一二月分

三ヶ月分合計

平均

申請人加藤

(1)賃金

(2)組合活動

欠勤補償

一万九〇五三円

五六二九円

一万六七三五円

五三九五円

一万三六〇八円

一万一九六八円

七万二三八八円

二万四一二九円

同中田

(1)賃金

(2)組合活動

欠勤補償

二万二〇五二円

五一九六円

二万二一五三円

四二五七円

一万三二五四円

九六四九円

七万六五六一円

二万五五二〇円

同松本

(1)賃金

(2)組合活動

欠勤補償

二万二九一三円

五六二九円

一万九一三八円

四六三〇円

一万四五四四円

一万二二二三円

七万九〇七七円

二万六三五九円

右(1)が会社から支給される給与であり、(2)は組合活動による欠勤に対し組合から受けた補償であり、(1)+(2)が一ケ月の所得である。

五  申請人らは、会社から支給される賃金等を唯一の所得源として自己及び家庭の生計を維持しているもので、本件解雇処分により直ちに生活に困窮し著しい損害を蒙りつつある。

(被申請人の申立及び陳述)

被申請人代理人は「本件仮処分命令申請を却下する、訴訟費用は申請人らの負担とする。」との判決を求め、次のとおり主張した。

一  会社は、日パ米子工場との間に締結した昭和三八年一月一日付請負契約に基づく同工場専用線における通運取扱業、通運代弁業、貨車積卸業、日パ米子工場内におけるパルプ製品及び原材料各種荷役等を業とするものであり、所謂日パ米子工場の下請会社としてその業務執行全般につき同工場所定の「請負業者の守るべき基準」の定めるところに従い、同工場の監督と指示に服する義務があるところ、申請人らの属する組合には粗暴、過激の振舞が多く、会社としては団交その他につき良識ある慣行の確立と就業規則による職場秩序の維持に腐心していたが、申請人ら組合は、別紙解雇事由のとおり組合活動に藉口してしばしば就業規則に定められた職場規律を守らず職場秩序を紊す違法行為を敢行し、会社の注意、警告を無視して何ら反省するところなく、このまゝ事態が推移すれば職場の秩序は全く失われ、ひいては会社としても作業注文者である日パから右の基準違反として前記請負契約を解除されて倒産の運命に陥る虞れがあつた(事実同工場からは数次に亘り右契約解除の警告を受けている。)ので企業防衛と労使関係の正常化のため已むを得ず右解雇事由を理由として本件解雇処分に及んだものである。

二  なお、申請人ら主張事実に対し次のとおり答弁した。

(一)  第一項の事実は認める。

(二)  第二項の事実中本件解雇事由掲記の申請人らの所為がいずれも正当な組合活動であるとの点は争う。(尤もその大部分のものが組合活動に関連してなされたものであることは争わない。)

1 団体交渉(以下「団交」という。)の強要等(別紙解雇事由6、7、イ及びロ)に関し。そもそも、団交は、労使間の紛争をできる限り争議行為に訴えることなく、平和的に問題を解決するためのものであつて、交渉が行詰まりこれを打開するため已むを得ず実力に訴えて紛争を解決することを目的とする争議行為とは自ら差異があることは多言を要しない。

然るに、申請人らの態度は、この団交の本来の目的を忘れ自分らの説得力の欠除を暴力の行使や脅迫によつて補い、団交そのものを闘争の場にすることを正当化しようとするものに外ならない。暴力や脅迫は、争議行為としても許されない。まして、平和的話合いの場であるべき団交の名の下に多衆の暴力的脅迫的言動によつて相手方を圧倒し、或いは少しも緊急開催の必要のない団交の即時開催を強硬に要求し、或いは、会社の意に反して深夜より未明に亘る団交を強い、或いは、団交要員でないことが明らかな非組合員を長時間に亘り罐詰状態におくことなどは到底法の容認するところではない。このような行為を企画、立案、決定し或いは具体的に指揮し実行した者、組合の執行委員等の地位にあつてこのような違法行為を容易に阻止し得たにも拘わらず敢てこれを黙認し阻止しようとしなかつた者が違法行為の責任に問われることは当然である。

2 第三者に対する業務妨害(同解雇事由1乃至5)に関し。労働者が争議行為によりその目的を達成しようとする場合直接にはあくまで紛争の相手方である使用者に打撃を与えることを目的とすべきである。換言すれば、直接第三者に損害を与えることを目的とする争議行為をなし、或いは、使用者に対する行動のみでその目的を達成し得る場合に、自己らの争議行為が第三者に損害を与えることを予測しながらこれを回避するための措置を講じないことは、その争議行為の目的手段において違法たるを免れない。本件においては、申請人らは、同人ら組合員の行なう争議行為によつて第三者である日パ米子工場の作業工程に停滞を来たすことを自認しながら、その争議実施に当たり、ピケツト(以下ピケという)と称して日パ工場長の立入禁止命令、退去命令を無視して日パ構内に坐り込み、同工場管理職の手による業務執行を妨害したのであつて、右申請人らの行為は、そのいうところのスキヤツブ防止の名にも値しないものであり、違法である。

3 職場占拠等(同解雇事由1乃至3、5、チ及びヌ)に関し。申請人らが日パ米子工場長が出した立入禁止命令、退去命令を無視して同工場の施設内に侵入し滞留した行為及び、同施設内に一〇数輛のトラツクを放置した行為は、第三者の施設管理権、営業の自由を侵害したものであり、このように争議行為が所有権の直接的な侵害という形態で行われることを第三者である日パ米子工場において受忍すべき義務のないことは、申請人らが会社の業務執行のため日パの施設内に立入り得るのは精々会社の業務執行(日パに対する請負契約上の債務の履行)のための占有(履行)補助者としてであるに過ぎないことに徴し明らかである。従つて、申請人らがストライキ(以下ストという。)により作業を停止すれば、同人らの占有補助者の地位も失われることは自然の理であり、同人らがその業務執行上必要とする日パ構内への立入理由もなくなるのであるから、争議中に申請人らが日パ構内の敷地を占拠することは違法である。

4 職場離脱(同解雇事由8、9、ハ及びニ)に関し。会社は、就業規則第四五条により勤務時間内の組合活動は原則として認めておらず、唯例外として就業時間内であつても業務運営状況等を勘案して会社が申請人らから申出のあつた都度できる限り許可を与え組合活動に便宜を計つて来たに過ぎず、申請人主張の労使間の慣行は存在せず、また会社が申請人らの違法行為を黙認してきたこともない。

第二項の本件解雇処分の背景をなす会社における労使関係のうち、会社がその設立当初から組合活動弾圧の任務を負つていたとの点及び会社の作業が機械的労働が主で代替性があり、そのために会社が日パ米子工場に従属し、その顎使に甘んじ、その圧力に抗し得ずして本件解雇処分に及ぶ結果となつた点は争うが、その他の事実は概ね認める。

(三)  第三項の事実は争う。殊に(二)については会社は過去における組合の数次の違法行為を容認して来たものではなく、その都度組合役員である申請人らに対し、注意警告を与えて自粛と反省を促し労使関係の正常化を期して懲戒処分を猶予してきたものであるに過ぎず、会社がその時々に懲戒処分にしなかつたとしても申請人らの主張のようにそれが免責されるわけではない。

(四)  第四項の事実は争う。本件解雇処分が有効であることは前記のところから明らかである。なお、申請人らの平均賃金の計算は不適法である。

1 労働基準法第一一条に定める賃金は、労働の対価として使用者が労働者に支払う金銭であつて、たとえ何らかの理由で使用者以外の者から労働者に支払われる金銭があるとしても、それは同法上の賃金ではない。申請人らが、組合より組合用務等のための欠勤補償と称する金銭的の補助を受けているとしても、これを実質賃金に加算して平均賃金の算出基礎とすることは法の認めないところである。

2 右の外、申請人らの平均賃金の計算は違式で誤りがある。平均賃金は、労働基準法第一二条第一項に基づき、これを算定すべき事由の発生した日、即ち本件解雇処分の日以前三ケ月間(申請人らの日給は一、一〇〇円)に支払われた賃金を暦日による総日数で除算した額を原則とするものであるが、会社の賃金支払日が毎月二〇日と定められているので、期間計算は、同条第二項により解雇直前の締切日を起算日となし、かつ、第一項但書及び第一項第一号の定めるところに従い計算した過去三ケ月分の総賃金額を実労働日数で除算した額の60/100の金額と、暦日総日数で除算した額とを比較し、高い分を採つて計算すべきであるところ、申請人らは、欠勤日数が非常に多く、就労日数が少いため、実労働日数で除算した金額の60/100に相当する方式による方が高平均値になるので、これを採用して計算すれば、次の計算のとおり、申請人加藤の平均賃金は日額金六四八円一九銭、同中田の平均賃金は日額金六四六円六二銭、同松本の平均賃金は日額金六一〇円六九銭となる。これが平均賃金の正数である。

(1)

氏名

月別

暦日数

労働日数

賃金

申請人加藤

一〇月

一一月

一二月

三〇日

三一日

三〇日

一六日

一六日

一一日

一万九〇五三円

一万六七三五円

一万〇六六五円

小計

九一日

四三日

四万六四五三円

同中田

一〇月

一一月

一二月

三〇日

三一日

三〇日

一八日

二二日

一二日

二万二〇五二円

二万二一五三円

一万一八三五円

小計

九一日

五二日

五万六〇四〇円

同松本

一〇月

一一月

一二月

三〇日

三一日

三〇日

二二日

一八日

一一日

二万二九一三円

一万九一三八円

九八五七円

小計

九一日

五一日

五万一九〇八円

(2) 申請人加藤分

イ 暦日数平均賃金 46453/91=510円48銭

ロ 労働日数〃   46453/43=1080円31銭……60/100=648円19銭

同中田分

イ 暦日数平均賃金 56040/91=615円83銭

ロ 労働日数〃   56040/52=1077円70銭……60/100=646円62銭

同松本分

イ 暦日数平均賃金 51908/91=570円42銭

ロ 労働日数〃   51908/51=1017円81銭……60/100=610円69銭

以上を要するに、本件解雇処分が無効であることを前提とする本件仮処分申請は失当であつて却下を免れない。

(疎明資料省略)

理由

一  被申請人が昭和四〇年一二月二九日従業員である申請人らに対し、同人らが全員、会社の就業規則第七九条第四号、第八一条第七号に所謂「服務規律を紊し、かつ、その情状が重い場合」に該当するとして同人らに対し本件解雇処分に付する旨の意思表示をしたこと、その解雇事由が被申請人主張の別紙解雇事由のとおりであること及び申請人らが被申請人会社創業(昭和三八年一月一日)以来右解雇処分当時までその従業員約一四〇名を以て組織された組合の組合員であつたことはいずれも当事者間に争いがない。

二  そこで被申請人主張の解雇事由(以下「本件解雇事由」という。)の存否及びそれが服務規律を紊した場合に該当するか否かについて順次検討する。

(一)  本件解雇事由のうち争議行為に関連するもの。(年月日順)

1  日パ構内におけるもの。

(1) 解雇事由1について。

被申請人が、日パ米子工場専用線における通運取扱業、通運代弁業、貨車積卸業、同工場内におけるパルプ製品及び原材料各種荷役等を業とするものであり、従つて申請人ら従業員の職場も殆んど同工場の敷地施設内であることは当事者間に争いがないところ、申請人松本時正本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる疎甲第二号証、証人江原潔の証言によつていずれも真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の四二乃至四四、証人米村竹雄の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第二二号証及び右各証言、右本人尋問の結果並びに申請人加藤静己本人尋問の結果によれば、昭和三八年四月一九日、組合は、賃上げ等を要求して午前八時から午前十時までのストに続いて午後三時から午後五時まで第二波のストをしたが、その間会社のスキヤツブ導入を阻止するため申請人ら組合員八、九〇名が同人らの職場である日パ製品倉庫内及びマシン室入口附近に集結してピケを張り同倉庫内に坐込む一方、右マシン室入口前でスクラムを組み、その際非組合員である長谷川、江原両課長代理がスト中のため自らの手で製品の入庫作業をしようとしたのに対し、「仕事をするな、スト破りじやないか」等といいながら申請人加藤が右長谷川の腕を、田中貢(当時組合は米子作業臨時労組と共同闘争をしていたが同人は同労組の副委員長であつた。)が右江原の腕をそれぞれつかんでこれを妨害したことが認められ、申請人加藤静己本人尋問の結果及び疎甲第二号証の記載中、右認定に反する部分はいずれも採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで、スト中であつても作業員が示威、ピケ等の必要上自分らの職場に立入り、又は坐込み等により一時これを占拠(排他的占拠を除く)することは、それにより積極的に会社の業務を妨害する等特別の事情がない限り会社が立入禁止命令、退去命令等を出したか否かその他会社の意思如何を問わず許されると解すべきであるから、右に認定した事情の下に右申請人ら組合員が、ピケのため右日パ製品倉庫内に坐込み、マシン室入口附近にスクラムを組んだ所為は違法ということはできない。ただ本件では右申請人らがピケをした場所は、同人らの職場であると同時に争議の直接の当事者ではない日パ米子工場の構内であるが、日パは、請負契約により右職場を被申請人に提供し、右申請人らがこれを日頃作業のため占拠することを許容している以上、その理は同一である。しかし、他方、非組合員は、自己の所属していない組合の争議行為に協力する義務はないから、使用者である被申請人としてもストに対する自衛手段として非組合員である従業員で職場を埋めることは当然なしうると解されるところ、申請人加藤及び組合員田中貢は、ピケとして許される平和的説得の限度を超えてそれぞれ非組合員である会社職員江原、長谷川の入庫作業を実力で妨害したのであるから、この点は明らかに違法である。そして、申請人加藤及び田中貢の前記の所為は争議から派生した突発事とも解されないから、申請人加藤が右違法行為について責を負うべきことは勿論、同松本も当時組合の執行委員長(同申請人本人尋問の結果によれば、同申請人は、昭和三八年一月一日の会社創業以来昭和三九年九月まで執行委員長、昭和四〇年九月から書記長の任にあつたことが認められ、他にこれに反する疎明はない。)という組合幹部の地位にあり当時争議を指揮したものとして違法な争議行為の防止に努力すべき義務を負つていたというべきであるから右義務に違背した点において同様の責任を負うと解すべきである。

(2) 解雇事由2について。

前記疎甲第二号証、疎乙第二二号証、証人米村竹雄の証言及び申請人加藤静己、同松本時正各本人尋問の結果によれば、昭和三八年五月六日、組合は、賃上げ等を要求して午前一〇時から翌七日午前九時まで二三時間のストをしたが、申請人ら(申請人中田を除く)ほか組合員約八〇名がスト突入と同時に同人らの職場である日パ製品倉庫内にピケのため坐込み、その後芒硝倉庫内にも同様ピケを張り、同六日正午から一時間休戦協定によりピケを解いたほか、同日午後一一時頃まで日パ米子工場長の退去命令に従わすピケを続けたこと、尤も申請人加藤、同松本は、同日午後八時三〇分から午後一〇時三〇分までの間会社との団体交渉のため右ピケの現場を離れたことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はないが、日パの業務を妨害したとの点については、前記各疎明資料に対比して採用しない疎乙第二二号証の右の点についての記載部分を措いてはこれを認めるに足る疎明がなく、そうだとすると、日パ米子工場長からの退去命令の有無を問うまでもなく右申請人等の行為を違法ということはできない。

(3) 解雇事由3について。

これを認めるに足る疎明はない。

(4) 解雇事由4について。

疎甲第二号証、証人松岡主の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の三八乃至四一、四五乃至五五及び疎乙第二二号証、証人松岡主、同米村竹雄の各証言並びに申請人加藤静己、同松本時正各本人尋問の結果によれば、昭和三九年五月二六日、組合は、賃上げ等を要求して午前八時から二四時間のストをし、スト突入と同時に日パ米子工場の正門及び裏門(いずれも日パ米子工場構内)に申請人ら(申請人中田を除く)ほか組合員全員が二組に分かれて坐込み、同日午後四時頃までピケを張つたが、右ピケに際し同日午前九時半頃、正門に、同工場が、被申請人の同意を得て雇入れた日通米子支店のトラツク二台が来て、組合員らの作業とは無関係の日パOP工場へ行くというので組合側においてその通過を許したところ、午前一一時頃、右トラツクは、組合員がその積込、運搬作業を担当している職場の製品を積込んで出門したことが判明したため、組合側は、その後、右トラツクが荷を卸し再び正門に引返してきた際、坐込みにより約四〇分に亘りその入門を阻止したこと及びそのため会社は、後日日通に対し損害賠償を余儀なくされたことが認められ、疎甲第二号証の記載中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで、組合員でない第三者に対しては組合の統制力が及ばないことはいうまでもないから、右第三者がスト中の組合員の当該作業を行ない事実上ストの効果を減殺する行為に出る場合であつても平和的説得により当該争議行為についての理解と協力を要請しうるに止まり実力でその就労を終局的に阻止することは許されないから、前記のとおり実力で右トラツクの通行を阻止した右申請人らの所為は違法というほかなく、右申請人らはその責を負うべきである。

(5) 解雇事由チについて。

前記疎甲第二号証、乙第四号証の二七乃至三一、証人松岡主、同足立清二の各証言、申請人加藤静己、同松本時正、同中田武美各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、昭和四〇年五月一六日、当時組合は賃上げ等を要求して闘争中で、同日午後四時から翌朝午前八時までストをしたが、スト突入に際し、組合の指令でそれまで作動中のトラツク一一台を会社所定場所に格納することなく、日パ製品倉庫脇空地に集め、翌朝までそこに放置したことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで労働協約等において別段の定めがない限り、作業員がストに入る場合、必ず事前に会社のトラツク等を所定の場所に格納しなければならない義務はないと解するところ、本件において、申請人らに対し拘束力のあるかかる定めがなされていたことを認めるに足りる資料はないのみならず、右トラツク等の放置された場所が当該事業場における安全保持のための施設の維持運営を妨げるような場所その他社会通念上放置に著しく不当な場所であつた等の特別の事情が存在したことを認めるに足りる疎明がないので、右申請人らの所為を目して違法なものということはできない。

(6) 解雇事由リについて。

前記疎甲第二号証、証人足立清二の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の一八、一九、同証言及び申請人加藤静己、同中田武美各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年五月二三日、組合は、午後三時から午後五時まで賃上げ等を要求してストをしたが、その間同人らの職場である日パ製品倉庫脇に申請人ら(申請人松本を除く)及び組合員多数が集結し、三〇分以上に亘り坐込んだことが認められ、申請人中田武美、同加藤静己各本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はないけれども、業務妨害の点についてこれを認めるに足る疎明がない。従つて、申請人らの右行為を目して違法となし得ないことは前記のところから明らかである。

(7) 解雇事由ヌについて。

前記疎甲第二号証、証人足立清二の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の一二、一三、証人松岡主の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の五五乃至七一、証人足立清二、同松岡主の各証言及び申請人松本静己、同中田武美各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年一二月八日、組合は、年末一時金等の要求に関して午後一時一五分からストをしたが、スト突入と同時に申請人ら(申請人加藤を除く。同申請人本人尋問の結果によれば申請人加藤が当時現場にいなかつたことは明らかである。)ほか組合員全員がピケのため同人らの職場(右申請人らは当時製品の日通倉庫への運搬作業はしていなかつたが、積込作業は依然同人らの作業であつた。)である日パ製品倉庫東側の製品積込ホームに集結して労働歌などを高唱し、日パ米子工場長の発した退去命令にも従わないで午後三時頃までここを占拠したこと、その結果、当時同工場の依頼により製品の積込み運搬作業に従事するため第三者である境港海陸運送株式会社により傭車され近くまで来ていたトラツク一台がその附近に一〇分間程事実上立往生するに至つたこと、しかし、その際右申請人ら及び組合員がそのトラツクの作業員等から直接退去を要求されたこともなく、右トラツクの作業員らも敢えて作業をしようともしなかつたことが認められ、証人足立清二の証言中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

以上によれば、右申請人ら及び組合員が境港海陸運送の積込作業を妨害したと断ずるには疑問があり、そうだとすると申請人らの右行為を目して未だ違法ということができないことは前記のとおりである。

(8) 解雇事由5について。

証人足立清二の証言及び申請人松本時正本人尋問の結果によれば、申請人ら及び組合員は、昭和四〇年一二月二〇日午後三時一五分から午後三時三五分までストをし、同人らの休憩所である日パ構内製品詰所に集結し、日パ米子工場長の立入禁止退去命令に従わなかつたことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はないが、集結した場所が右申請人らの休憩所である以上これにより当然に被申請人会社の業務が妨害されたといえないことは明らかであり、他に、右申請人らの右行為により被申請人会社の業務が妨害されたことを認めるに足る疎明はないから右申請人らの所為を目して違法ということはできない。この程度の所為はスト中であつても右申請人らにおいて自由になしうるところというべきである。

2  それ以外のもの。

(1) 解雇事由6について。

前記疎甲第二号証、疎乙第二二号証、証人米村竹雄、同江原潔の各証言及び申請人加藤静己、同松本時正各本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。即ち、昭和三九年五月一五日、申請人加藤、同松本ら組合執行部は、前日に引続き賃上げ等を要求して午後六時三〇分頃から会社側と団交したが、双方の主張は平行線をたどつて交渉は殆んど進展せず、午後一一時頃、会社側から休憩を申入れ組合側もこれに応じて一旦休憩に入つた。ところで従業員控室では五、六〇名の組合員が交渉の成行きを見守つて待機しており、団交中時折一部組合員がアコーディオンを弾き労働歌を合唱する等しながら気勢をあげていた。たまたま、右休憩時間中に、それまで会社に居残つていた非組合員の江原、麻木、長谷川、赤松各課長代理が帰宅のため事務所を退出しようとしたところ、事情を知らない一部組合員が、会社が一方的に団交を打切り団交員である同人らが帰宅するものと速断し一旦その帰宅を阻止したが、執行委員松原厚の説明で事情を了解し直ちに妨害を止めたことがあつた。そのため右帰宅阻止行為の責任の所在をめぐつて事態が紛糾し、会社側は、このような雰囲気の下での団交には応じられないとしてその再開を拒んだが、組合員らは、事務所出入口を見張り、中にいた当時の浜井常務、米村部長、神田総務課長、服部作業課長ら会社側団交員を足どめして事務所から出難い状態にしながら同人らに対し翌一六日午前三時三〇分頃までの間再三に亘り執ように団交の再開を迫つた。以上の事実が認められ、疎甲第二号証、疎乙第二二号証、証人米村竹雄、同神田英夫の各証言中それぞれ右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

右に認定した事情の下では非組合員の帰宅を阻止した点はこれを目して違法というには当たらないというべきである。ところで、労働関係の当事者の一方から相手方に対し団交の申入れがあればそれが正当な権利行使とみられる限り相手方はこれに応ずる義務があるが、何が「正当な権利行使」であるかは社会通念に従つて決すべく、右に認定したところによれば、右申請人ら組合執行部は五月一五日も会社側団交員と午後六時半頃から午後一一時頃まで団交したが交渉は殆んど進展せず更に続行してみても早急に妥結点に達することは見込み薄であつたにもかかわらず、申請人らは翌朝午前三時三〇分頃まで相手方である会社側の意向を無視して執ように団交を迫つたのであるから、かりに右申請人らが争議の早期解決を望むあまりこのような行為に出でたものであつても、その手段方法において明らかに行過ぎであり違法たるを免れないというべく、当時組合側団交員であつた申請人加藤、同松本がその責を負うことは当然である。

(2) 解雇事由7について。

疎甲第二号証、証人足立清二の証言及び申請人加藤静己、同松本時正各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年六月一二日、組合は、賃上げ、職場固定等を要求して午後一時からストをしたが、スト突入前の午後〇時半頃から申請人らほか組合員殆んど全員がピケのため会社事務所の周辺に集結し、出入口前にはスクラムを組んで立ち、午後五時過ぎまで、米村常務、足立部長ら非組合員がスト中の作業のため事務所を出て職場に行くのを実力で阻止したことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで作業員のスト中に会社がストに対する自衛手段として非組合員の手により業務維持のため必要な作業をすることは当然なしうると解すべきことは前記のとおりであるところ、さきに認定したところによると、申請人らほか組合員は、会社の事務室の出入口前附近に集結し、非組合員である米村常務、足立部長らが作業場に行くのを実力で阻止し、その業務を妨害したのであるから、右組合員らの所為は違法というべきであり、このような違法な争議行為を企画、実行又は指揮した当時組合の執行委員長であつた申請人加藤(同申請人本人尋問の結果によれば、同申請人は昭和三八年当時は副執行委員長、昭和三九年以降は執行委員長の任にあつたことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。)及び執行委員であつた申請人中田(同申請人本人尋問の結果によれば、同申請人は昭和三九年九月に執行委員となり昭和四〇年九月以降は副執行委員長の任にあつたことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。)もその責を負うものというべきである。

(3) 解雇事由イについて。

疎甲第二号証いずれもその成立に争いがない乙第二九号証の一乃至三、証人足立清二、同小川正夫、同江原潔の各証言及び申請人加藤静己、同松本時正各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年一二月六日、組合は、年末一時金等を要求して午前八時から午前一〇時まで及び午後一時から午後五時までストをしたが、午後二時三〇分頃申請人加藤、同松本ら執行委員及び職場委員の全員一九名位が組合の全員集会の決議に従つて会社事務所に足立部長及び小川常務を訪れ、翌七日午前九時からなら団交してもよいという会社の意向を無視して即時団交を強硬に要求し、その際申請人加藤ら執行委員の意思とは無関係に申請人らの後に続いて入室して来ていた一四、五名の組合員とともに会社の退去命令に従わず約一時間に亘り右事務所内に留まりその場を騒然とさせ、右常務ほか事務所内で執務していた職員の業務の遂行に支障を与えたことが認められ、証人足立清二の証言中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。なお、申請人加藤らが足立部長らに脅迫的な言葉を吐いたことの疎明はない。

ところで、右申請人ら組合執行部及び職場委員一八、九名が小川常務らに即時団交を迫つた点について、同人らが会社側の翌七日午前九時からならば団交をしてもよいという会社の意向を無視してまで即時団交を要求しなければならなかつた事情についての疎明がないのみならず、申請人加藤は、当時執行委員長として、同松本は、書記長として、それぞれ組合の責任ある立場にある者として組合員による違法行為がなされないよう充分の配慮をなすべき義務があると解するところ、本項冒頭掲記の右各証拠によれば、右申請人らは、当時団交権限をもたない一般組合員一四、五名が右申請人らの後に続いて事務所に入つてきて口々に会社側に団交を迫り、それがため同事務所内で事務を執つていた非組合員の業務の遂行に支障を与えていることを知りながら、右組合員らに退去を求める等の適切な処置をとらなかつたばかりか、同人らとともに即時団交を強硬に要求し、同室内を一時間以上に亘つて騒然とさせ、右業務の遂行に支障を与えたことが明らかであるから、右申請人らの所為は違法というべきであり、右申請人らはその責を免れない。

(4) 解雇事由ロについて。

疎甲第二号証、証人足立清二の証言によつて真正に成立したものと認められる疎乙第四号証の一乃至九、証人足立清二、同小川正夫、同神田英夫、同町野一生、同江原潔の各証言及び申請人加藤静己、同中田武美各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年一二月一一日、組合は、年末一時金等を要求して会社事務所で会社側と午前九時過ぎから団交したが、午後四時二五分頃、一旦休憩した後再開された団交の席で会社側から最終案が提示され、組合は、これを組合員にはかつて検討する、次回の団交の日時取決めは足立部長と交渉して決めるということで、午後四時三五分頃、一旦団交を打切つた。しかし、組合側は、その直後、従来の例と異なつて今回の回答では日雇に対する回答がなされていないことに気付き、申請人加藤、同中田外組合員四名が右事務所に引返えし同常務に対し「おい、こら、常務、先刻の回答が会社の最終案ならば日雇分の回答もせよ」などといいながらその点の回答を求めたが、同常務は、日雇は組合員ではないからという理由でその回答を拒み、同じような押し問答が繰り返され、約一〇分後、右申請人らは、とにかく組合員分の回答を検討するということで事務所を引き揚げたが、検討の結果、会社の回答には不満ではあるが、早期解決のため会社の態度如何によつては妥結も已むを得ないという考えの下に、午後五時前頃、再び事務所に赴き、日通トラツク松江支店長代理町野一生との用談のため事務所を出ようとしていた小川常務に対し即時団交を申入れた。しかし、同常務は、右申請人らに対し、用向きを明らかにせず、今日は帰らなければいけないので団交は持てないというのみで、その上右申請人らを振切つて事務所を出ようとしてその出入口前附近まで出たところ、その場に居合わせた組合員吉村敏にその進路を阻まれた。その頃、丁度作業終了時の午後五時になり、一般組合員が続々職場から事務所の方に集まつてきたが、右申請人らから当日の団交の経過を聞くや交々右常務に団交を迫つた。しかし、同常務は、右組合員らの要求を全く無視して事務所に引返し、側にいた神田課長が内から施錠した。右組合員らは、会社側の態度に憤慨し、日韓条約粉砕、佐藤内閣打倒等と記したプラカードを手にして事務所出入口附近を取巻き、携帯用マイクで会社の不誠意をなじるなどの行為に出た。午後五時五五分頃、事務所内に残つていた女子事務員が帰宅するため出入口の戸をあけた際、申請人加藤外組合員五名が足立部長らの制止にもかかわらず強引に事務所内に入り、再度即時団交を申入れた。しかし右常務らは、こういう雰囲気の中では団交はできないと依然拒み続けていたところ、そのうち執行委員岩佐健によつて事務所出入口の施錠が解かれた結果組合員五、六〇名が事務所(床面積約一五坪)の中に入つて来て、内にいた同常務、足立部長、神田課長、それに江原、麻木両課長代理らの身辺に群がり、そのために同常務らは自由に行動できないほどの状態になつたが、そのような中で、右申請人ら組合員は、同常務に対し机をたたくなどして口々に「三等重役だけ、ようやらんだ。」「覚えとれよ、最後は労働者に屈服するんだ。」などと罵り、事務所内を混乱状態に陥れた。その間、会社から再三口頭で退去命令が出されたが、右申請人らは、これを無視して同室内に居続け、午後六時四〇分頃に会社の要請で制私服の警察官八名が事務所に到着するに及んでようやく事態が収拾されたことが認められ、申請人加藤静己、同中田武美各本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

以上の事実について検討するに、申請人加藤らが日雇分の回答を小川常務に要求した点は何ら違法視するに足りないものである。ところで当事者の一方から正当な団交の申入れがあれば相手方はこれに応ずる義務があるが、だからといつて已むを得ない事由等がある場合にまでその指定した日時に必ず申入れの団交に応じなければならない義務はなく、信義に従い誠実にその義務を履行するを以て足ると解するところ、小川常務は、組合の団交申入当時既に当日の団交終了後直ちに日通トラツク松江支店長代理外一名と面談する約束をしていたというのであるから、(証人小川正夫、同町野一生の証言)右申請人らの団交申入れを拒む正当の理由があつたというべきであるから、(同常務が右申請人らに対し用向きを告げていない点は妥当を欠く憾みがある。)当時組合としては会社より最終案を提示された段階であるため、争議を一挙に解決したい意向の下に即時団交を強く希望し申入れたものとしても、前記のとおり同常務の意向を無視して実力でその外出を拒み、更には職場から戻つて来る多数組合員を見て事務所内に逃避した同常務に強いて面会を求めるべく、足立部長らの制止にもかかわらず、その意に反して、強引に事務所内に押入るなどして団交を迫つた申請人加藤、同中田ら執行委員の所為は、違法たるを免れず、右申請人らは右違法行為につきその責を負うべきは当然である。また、それが右申請人らの意思とは無関係に執行委員岩佐によつて施錠を解かれた結果入室した者であつたにせよ、団交の権限をもたない組合員五、六〇名が、事務所内一杯に入つて来て同常務らの身辺に群がり、その結果同常務ら非組合員を自由に行動のできない状態にしたうえ、机を叩くなどして口口に同常務らを罵倒し、事務所内を一時混乱状態に陥れたのに、右申請人らが組合幹部として右組合員らに退去を求めるなど適切な処置をとらないで放置したばかりか、自らも右組合員らとともに会社の再三に亘る退去命令を無視して事務所内に滞留しこれを占拠した所為も明らかに違法であり、右申請人らがその責を負うべきは当然である。

(二)  就業時間内組合活動に関するもの。

(1)  解雇事由8について。

昭和三八年一月一五日、申請人ら(申請人中田を除く)が、就業時間内である午後一時から午後五時まで、組合の執行委員、職場委員合同委員会を開催又はこれに出席し組合活動をしたことは当事者間に争いがなく、これにつき右申請人ら主張の会社の許可があつたこと、或いは届出だけで許可を要しないという慣行が会社との間に存したことを認めるに足る疎明はない。

しかし、証人清水真の証言によつて真正に成立したものと認められる疎甲第一号証、前記疎甲第二号証、疎乙第二号証、申請人松本時正本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被申請人は、申請外松井組が解散したのに伴い、日パから右松井組が請負つていた日パ米子工場での作業を代わつて請負うことを目的として設立された会社で、作業員も殆んど右松井組当時の作業員を引継いだものであり、更に、会社は、日パ労働組合米子支部との間にではあるが、新会社においても松井組当時の労働協約等の大綱は原則として尊重するよう努力することを確認していたもので、松井組当時には組合役員が就業時間内に執行委員会等に出席する場合にも使用者側に対しては予め組合用務につく旨の届出をするだけでよく、その許可を得ることは要せず、使用者側も右届出があれば異議なくこれを承認するといつた慣行があつたところ、昭和三八年一月一五日の執行委員会は、当時会社の創業間もない頃で、会社から求められた就業規則に対する組合の意見をまとめるため開催されたものであり、右申請人らは、予め右松井組当時の慣行に則つて会社に届出をしていることが認められる。証人米村竹雄の証言中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで会社の就業規則第四五条が就業時間内の組合活動を禁じていることは申請人らもこれを明らかに争わないところ、右委員会の開催又はこれに出席するについて会社の許可があつたこと、或いは当時その主張の許可を要しない慣行が組合と会社との間にあつたことその他右開催を違法でないとするような特別の事情についていずれも疎明がない本件では、右申請人らの所為を違法といわざるを得ない。

(2)  解雇事由9について。

昭和三八年四月一六日、申請人ら(申請人中田を除く)が就業時間内である午後一時から午後五時まで組合の執行委員会を開催又はこれに出席し組合活動をしたことは当事者間に争いがないところ、前記疎甲第二号証及び申請人松本時正本人尋問の結果によれば、二日後の同月一八日会社の当時の浜井常務が常務室に組合の執行委員長である申請人松本を招き、事後にではあるが、右委員会の開催を承認したことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。そうだとするとこれが解雇事由から除外されるべきことは多言を要しない。

(3)  解雇事由トについて。

疎甲第二号証、証人神田英夫の証言及び申請人加藤静己本人尋問の結果によれば、昭和四〇年九月二五日、申請人加藤は、組合活動に関する打合わせをしていて午前一〇時から一五分間の休憩時間を過ぎた午前一〇時半頃まで作業にかからなかつたことが認められ、証人神田英夫の証言中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで、右申請人が怠業した理由が組合活動をしていたためであつても申請人らにおいて許可のない就業時間内の組合活動が許されていないことは前記のとおりであるから、会社の許可があつたことその他これを違法でないとする特段の事情等につき主張立証のない本件においては右申請人らの所為が違法であることは明らかであり、右申請人らはその責を負うべきである。

なお、被申請人主張の同年一一月八日及び同月一八日の両日右申請人が怠業したことについてはこれを認めるに足る疎明がない。

(4)  解雇事由ハ及びニについて。

疎甲第二号証、証人足立清二の証言及び弁論の全趣旨によれば、昭和四〇年一一月四日及び同年一二月一日の両日申請人らがいずれも就業時間内である午後一時から午後五時まで組合の執行委員職場委員合同委員会を開催又はこれに出席し組合活動をしたことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はなく、また、これにつき申請人ら主張の会社の許可があつたこと、或いは許可を要しない慣行が存したことについてはこれを認めるに足る疎明はないから右申請人らの所為は違法と断ぜざるを得ない。

(三)  その他

(1)  解雇事由10について。

疎乙第二二号証及び証人米村竹雄の証言によれば、昭和三八年九月一一日午前九時半頃会社がバタ材処理のため傭車していた日通シヨベル、ローダー二台が故障したので、赤松課長代理及び服部作業課長が、当時会社のシヨベル、ローダーを運転していた申請人加藤に対し臨時に代わつて右バタ材の運搬作業を命じたところ、右申請人はその主張のような理由からこれに従わず同日正午まで会社の右業務命令に違背したことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

これによれば、会社は右申請人に対しその主張のように日通への出向作業を命じたものではないばかりか、シヨベルの故障という偶発的事故のため一時的に応援を求めたものに過ぎず、しかもその作業内容にはその前後を通じて何らの変化も生じないから、かりに右申請人ら主張の協定が当時あつたとしても、これが右協定に所謂「労働条件の変化」に該当しないこと明らかであり、右業務命令に違背した右申請人の所為は違法であり、右申請人はその責を負うべきである。

(2)  解雇事由ホについて。

昭和四〇年七月二九日から同月三一日までの間申請人ら(申請人松本を除く)は上司より命じられた、日通倉庫への輸送のためのトラツク積込作業に従事しないよう作業員に指示してこれに違背させたことは当事者間に争いがないところ、かりに右申請人らがその主張の経緯から作業員に指示して積込作業を拒否させたものであるとしても、その主張の日通昭和町倉庫への運搬及び同倉庫内でのはえ積み作業がなくなつた結果従前その作業を担当していた作業員がそれにより労働条件の悪い職場への配置転換を命じられる等不利益を受けた場合に、その主張の協定違背を理由に(会社が右協定に所謂「事前協議」を組合としたとの点についてはこれを認めるに足る疎明がない。)その不利益処分を争うような場合なら格別、従前の作業内容の一部である積込作業を命じたにすぎない会社の業務命令が右協定違背を理由に無効となるとは解されない。そして右業務命令が右にいう不利益処分に当たることにつき疎明がない本件では右申請人らの所為は違法というのほかはなく、右申請人らはその責を負うべきである。

(3)  解雇事由へについて。

疎甲第二号証、証人松岡主の証言によつていずれも真正に成立したものと認められる疎乙第三、第一三号証、同証言、証人神田英夫の証言、申請人松本、同中田各本人尋問の結果によれば、昭和四〇年九月九日、当時日パ米子工場には被申請人始め約一一の日パの所謂下請会社がその作業のため出入りしていたが、構内秩序維持のため日パは右下請業者の守るべき準則として「請負業者の守るべき基準」を定め各下請業者にこれを周知させていたところ、その第三一条によれば作業員が日パ米子工場構内へ入り、または出るに当つては、必ず日パ又は所属の下請業者発行の身分証明書を同工場保安係員に呈示することになつており、申請人ら組合員もこれに従つていたところ、(もつとも実際は所謂顔パスにより入出している者が殆んどであつた。)同日昼休憩時に会社の神田課長から、日パ米子工場長からの通達があつたので翌一〇日からは日パ構内への入出に際しては作業員は右の身分証明書の呈示に代えて氏名札を裏返すようにとの指示があつたが、組合執行部としては理由が明確でないとの理由でこれに従わないこととし、組合員にも指令して同月一〇日申請人ら組合員は一斉に右会社の指示に違背したことが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで、本件入出門手続のような事項については、日パ米子工場においてその構内秩序維持のため必要と認めれば施設管理権に基づいて自由にこれを定めることができ、被申請人ら下請業者従つてその従業員である申請人ら作業員も右構内に出入りする以上これに従うべき義務があり、これを改廃するについても、その都度申請人ら下請業者従業員の意見を聞かなければならないものではないから、右認定のような理由で同工場長からの通達に基づく会社の指示に自ら違背し、他の組合員にも指示してこれに違背させた右申請人ら組合幹部の所為は違法であるというべきであり、右申請人らはその責を免れない。

三  以上認定の申請人らに違法行為ありとされた、解雇事由8、1、10、6、4、7、ホ、ヘ、ト、ハ、ニ、イ及びロは会社における職場の秩序維持のうえからいずれも穏当を欠き、就業規則第七九条第四号に所謂「服務規律を紊したとき」に該当するといわざるを得ないところ、これを理由に、就業規則に所謂「情状の重い場合」に該当するとして懲戒解雇ができるかどうかを検討する。

団体交渉その他の団体行動に関する所為であつても、違法で、かつ、職場秩序を乱したものについては懲戒の対象となりうると解され、本件解雇事由のうちこれに当たるものは昭和三八年四月一九日のピケの行過ぎ(解雇事由1)、同三九年五月一五日の団交要求の行過ぎ(解雇事由6)、同月二六日の日通トラツク入門阻止(同4)、昭和四〇年六月一二日のピケの行過ぎ(同7)、及び同年一二月六日、及び同月一一日の団交要求の行過ぎ(同イ及びロ)であるが、これらの所為については同時にそれが経済的地位の向上を目指す生活上の切実な要求に基づくものであること及びそれが争議中という異常な事態の下になされたものであることについて充分な配慮がなされなければならないというべく、この点及び前記認定に係る当該違法行為のなされるに至つた経緯及びその態様を検討考慮するに、他の解雇事由に比較して前記認定の程度の所為がその情状において特に重いということはできない。しかも解雇事由1については、実力による違法な業務妨害も短時間にすぎずその態様も特に悪質重大という程のものではなく、右違法行為の故を以て右争議行為全体が直ちに違法性を帯びるということができないのみならず、被申請人が右行為当時特にその責任を追及した形跡なくすでに二年以上も経過した後になつて解雇事由として取上げたことに徴しても、当時の状況下において、右違法行為が使用者により通常懲戒解雇の理由として取上げられる程度のものではなかつたことが窺われる。また就業時間内組合活動に関する解雇事由8、ト、ハ、ニについては申請人松本時正本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、組合は会社創業以来当時まで数十回に亘り就業時間内に執行委員会、合同委員会等を開催してきたが、これにつき会社は必ずしも明確な態度をとらず(乙第七号証の二によれば本件後に始めて会社は昭和四〇年一二月三日付書面で組合の執行委員長である申請人加藤に警告を発している。)成り行きにまかせていた観があり、申請人ら主張のように慣行とまではいえなくても事実上会社が就業時間内組合活動を黙認しているかのような感を組合に与えたものと推測されるのであつて、右申請人らが右の違法行為を敢行するに至つた原因につき会社側にも従来の組合側の右態度に対する適切な措置に欠けるところがあつたという点で責任があると考えられる。従つて、右申請人らの所為により会社の業務に支障を与えた影響は必ずしも小さくないにせよ、申請人らの右行為は、その情状において酌量すべきものであり、そのうえ、同解雇事由トについては、時間も比較的短時間であり、この点においても情状酌量の余地がある。同年七月二九日から同月三一日に至る積込作業に関する業務命令違反(解雇事由ホ)については、疎甲第二号証によれば申請人らはその主張の経緯から右所為に及んだものであることが認められ、他に右認定に反する疎明はなく、同申請人らが当時組合の執行委員の任にあつた立場上、従前日通倉庫への運搬作業及び同倉庫内でのはえ積み作業を担当していた組合員のためを慮つてかかる所為に出たものでその心情を汲めばその情状において酌量の余地がないではない。また同年九月九日の氏名札の件(解雇事由へ)については特にこのために会社の業務遂行上実害があつたとも考えられないから未だこれを以て悪質重大なものということはできない。昭和三八年九月一一日のシヨベルに関する業務命令違反(解雇事由10)については、その情状必ずしも軽くないが、それが本件解雇処分より二年以上も前のことであり、会社が本件解雇前これを問題にしたことがない(会社が本件解雇処分前これを問題として取上げたことの疎明はない。)という会社の態度を考慮すればこれについても情状酌量の余地あるものというべきである。ところで以上の事情に加え、更に、被申請人の主張する解雇事由は、昭和三八年一月一五日から昭和四〇年一二月一一日まで約三年に亘る間のものであるが、会社は、従来右申請人らの違法な所為に対して必ずしもその都度適切な措置をとつておらず、(尤も乙第七号証の一乃至四によれば、解雇事由ホについては昭和四〇年七月三一日付の、同ハ、ニについては同年一二月三日付の、同イについては同月七日付の、同ロについては同月一四日付の各書面でいずれも当時組合の執行委員長である申請人加藤宛に警告を与えていることは認められる。)就業規則(疎乙第一号証)上認められている譴責、出勤停止等の他の懲戒処分をこれまで全然問題にした形跡のないこと(従来会社がこの点を特に問題にしたことの疎明はない。)をも併せて考慮すれば、現在改悛の見込みがない程、情状が重いとして申請人らを一挙に懲戒解雇することは苛酷に過ぎ就業規則の懲戒規定の適用上懲戒処分をするについての裁量権の範囲を逸脱して著しく当を失した措置と解するほかはない。

従つて会社が右申請人らに対してなした本件解雇処分は結局就業規則の適用を誤つたものとして無効というべきであり、このことは、申請人加藤について妥当するほか、それより解雇事由の少ない申請人松本、同中田についても同様である。

四  保全の必要性について検討する。申請人加藤静己本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる疎甲第四号証、同中田武美本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる疎甲第五号証、同松本時正本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる疎甲第六号証及び同申請人ら各本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨によれば、被申請人は本件解雇の意思表示をした日の翌日である昭和四〇年一二月三〇日以降申請人らを被申請会社の従業員として取扱わず、かつ同日以降の給与の支払を拒んでいること、申請人らは被申請会社から支払われる給与を唯一の生活の資としていること、右申請人らは本件解雇処分以降主として組合からの借入金により生計を維持してきたものであり、右借入金は本訴において申請人らが勝訴すれば返済を迫まられる性質のものであることが認められ、他に右認定を左右するに足る疎明はなく、そうだとすると、申請人らは本案判決を待つていては著しい損害を受ける虞れがあるから、これを避けるため、本件仮処分を求める必要があるというべきである。

五  仮払いの賃金額について検討する。本件解雇に先立つ昭和四〇年一〇月分、同一一月分の賃金として、申請人らがそれぞれその主張の金額の支払を被申請人から受けたこと及び賃金支給日が毎月二〇日(日給月給制)であることは当事者間に争いがなく、同年一二月分の賃金及び申請人らの右三箇月間の労働日数についてはその額が申請人ら主張の金額であること及び右労働日数を認めるに足る疎明がないから当事者間に争いがない被申請人主張の金額及び日数の限度でこれを認めるべく、そうだとすると、申請人らの本件解雇前三ケ月間の平均賃金は、相当と認められる被申請人主張の方式で算出すると申請人加藤が日額金六四八円一八銭、同松本が日額金六一〇円六八銭、同中田が日額金六四六円六〇銭であり、右申請人らが本件解雇処分の日の翌日以降毎月二〇日の支払日に支払を受ける賃金は毎月二六日労働に対応して申請人加藤が月額金一万六八五二円(円未満切捨て、以下同じ。)、同松本が月額金一万五八七七円、同中田が月額金一万六八一一円であることが認められる。

なお、申請人らが主張する組合活動欠勤補償額についてはこれを被申請人に対し支払を求めうる根拠が明らかでないから本件仮処分の申請中これが支払を求める部分はその他の点について判断するまでもなく失当である。

六  以上により、本件仮処分申請中、申請人らが被申請人の従業員としての地位を有することをかりに定める旨の申立及び本件解雇処分の日である昭和四〇年一二月二九日以降の賃金の仮払を命ずる旨の申立は、右の限度で、被保全権利及び保全の必要性につき疎明があり、かつ、相当と認められるから、保証を立てさせないでこれを認容し、その他の申立は、被保全権利の存在につき疎明がなく、保証を立てさせて仮処分を命ずるのも相当でないから、これを却下し、訴訟費用の負担について民訴法第八九条、第九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋正之 荒木恒平 松井賢徳)

符号

解雇事由

該当者

答弁

申請人ら(以下それぞれ下段の当該該当者欄記載の申請人を表すものとする。)は、昭和四〇年一二月六日午後二時三○分頃、組合が年末一時金の要求に関し第三汲のストライキ(以下「スト」という。)を実施中作業員三五、六名を煽動連行して会社事務室に乱入したうえ、小川常務、足立総務部長、江原課長代理の三名に対し脅迫的な言葉を以て団体交渉(以下「団交」という)を強く要求し、右常務らがスト中で人手不足のため事務多忙であるから今直ちに団交を行なうことはできない旨答えて断つたところ、右申請人らは、これを聞き容れず、他の作業員とともに右常務ら三名を包囲し喧騒をきわめたので、会社は、已むなく右申請人らに対し退去命令を出したが、右申請人らは、これを無視し、一時間以上に亘り威力を用いて右常務ら三名の業務の執行を妨害した。

申請人加藤

同松本

イ 同日、組合は、午後一時から午後五時まで時限ストを行なつた。前日の五日は終日会社と団交を行なつたが話合いは物別れとなつたので、組合は、六日にも団交を行ないたいとの意向の下に午後二時頃申請人松本が執行委員一名を同行して事務室に赴き団交の申入れを行なつたのに、会社は、即座に右の申入れを拒絶した。そこで、組合員集会の決議に基づいて、申請人加藤が執行委員長として他の執行部らとともに再び事務室に赴き、小川常務、足立部長に再度団交の申入れをした。その際当日までの闘争の経過の中で会社の強圧的、かつ、誠意のない態度に憤激していた一般組合員多少が右申請人らの入室した後に続いて入室してきたが、これは、被申請人主張のように右申請人らにおいて煽動連行したものではない。小川常務は、当初右の団交申入れに対し「スト中は団交は持てない」と云つて一旦これを拒否したが、右申請人らは、更に言葉を尽して団交を求めた結果、結局翌七日に団交をもつことに決定した。勿論、右団交申入れとその決定に至る問、申請人らを含む組合員は、現業の労働者であつて、しかも争議中であるから、当然その語気が荒くなり、室内も多少騒然となつたこともあり得るが、団交申入れの目的で入室しその交渉を行う以外ことさらに会社の業務の妨害を意図したわけではない。この程度のことは、争議が労資の実力抗争の場である以上争議に附随してしばしば起りうる状況に過ぎない。要するに、右申請人らの行為は、団交のための交渉という組合の正当な行為であつて職務規律違反に問われる理由はない。

同年一二月一二日、社会は年末一時金につき午前九時一〇分から組合と団交を行い、第四次回答として平均三万一五〇〇円を示し、組合もこれを検討することになり、午後四時三五分頃、同日の団交を打切つた。ところが、それから間もなく、申請人加藤外五名が事務所を訪れ、小川常務に対し、「おい、こら、先刻の回答が会社の最終案なら日傭分も出せ」と詰め寄り団交の再会を要求したので、同常務は、日傭は組合員ではないから組合との交渉が妥結してからにしてほしい旨、また、今から日通トラック松江支店町野支店長代理、同門脇課長との用談があり外出しなければならない旨告げてこれを断り外出しようとしたところ、右申請人らは、実力でこれを阻止した。他方午後五時過ぎには右申請人ら組合幹部の教唆煽動によつて続々作業場から掃つてきた多数の作業員が事務所を完全に包囲したうえ、日韓条約反対等と記したプラカードを掲げて同事務所の戸を叩き、携帯用マイクを以て悪口雑言をわめき、午後五時四五分頃まで事務所内に小川常務、足立部長、神田課長、江原、麻木両課長代理を罐詰にし監禁状態に陥れた。ところで、午後五時五〇分頃、汽車通勤の女子職員中淑子を帰宅させるため同室内にいた足立部長が出入口の扉を開いたところ、その隙に同部長らの制止にも拘わらず右申請人ら及び申請外岩佐健ら数名が、実力を以て同室内に乱入し、更に、午後六時頃にも右岩佐によつて出入ロの施錠が解かれ、四、五〇名の作業員が同室内一杯に招き入れられた。そして右申請人らは、会社の再三に亘る退去命令を無視して同室内にいた右常務、部長、神田課長、江原、麻木両課長代理らを包囲して身動きもできない状態にし、同常務らに対し机を叩いて口々に、「三等重役だけ、つまらん奴だ」「最後は労働者に屈服するんだ」といつたような侮辱的な言葉を以てこれを罵倒する等同室内を一時収拾のつかない混乱状態に陥れた。その間室外では待ちあぐんだ前記日通トラック町野松江支店長代理が右事務所を訪れたが、組合員多数に阻まれて出入ロに近づくこともできなかつた。その後右の事態は益々険悪化し、右常務らは、右申請人らに袋叩きにあうのではないかという身体に対する危惧を感ずるようになつたので警察署に警察官の派出を要請し、午後六時四〇分頃警察官が到着してようやく事態が収拾された。右の申請人らの行動は、刑法上の住居侵入、不法監禁、威力業務妨害に該当する不法の行為というべく、服務規律違反の最たるものである。

申請人加藤

同中田

ロ 同日は午前九時から団交を行ない午後四時二五分会社から最終案として一律七〇〇円プラス六〇〇円が提案され、組合は、これが最終案ならば検討するということで午後四時三五分頃一旦団交を打切つた。ところでこれより先の一一月五日の団交の席上会社は日傭労務者に対する一時金の回答は従来の慣例に従つて組合に対する最終回答と同時にすることを確約していたので、組合としては、右が最終回答なら約束どおり日傭分の回答も貰う必要があることに気付き、直ちに事務所に赴き会社に日傭分の回答を求めた。これに対し、会社は、右の確約さえも頭から否定し、その回答を拒んだので、その不誠意に組合員は憤激したが、午後四時四〇分頃、一旦事務所から引きあげた。そして組合側は、右の最終回答を検討した結果不満であつたが争議も長びいているので場合によつては妥結もやむを得ないと判断し、事務所に小川常務を訪れ、同人に対し、争議を早急に解決するため再度団交申入れに釆た旨説明し、もし同日中に団交をもてないならば明日もつことに協力してもらいたい旨申入れた。争議状態は刻々変動するものであり、特に、会社が最終回答を呈示した段階であるから、組合が解決への誠意を示して団交を申入れた状況では、会社に争議の自主的解決を求める誠意があるならば、万障を繰り合わせてでも団交申入に応ずるのが通常期待されるところであり、かりに即時団交再開について被申請人主張のように日通トラックの支店長代理等との用談のため支障があつたとしても、団交日時を打合わせる位のことは何ら困難はない。それにも拘わらず、小川常務及び神田課長は、団交日時の打合わせも明朝にしようと答え、組合側の要請を一願だにせず室外に退出しようとした。この様な会社側の態度には争議解決への誠意は全く見られなかつた。その頃(午後五時過ぎ頃)丁度組合員が作業を終つて続々と控室に帰つてきたが、それまでの話合いの経緯について執行部から説明を受け、或る者は帰りかけていた小川常務、神田課長に団交に応ずるよう説明しようとした。すると右常務らは事務所に引返して施錠して立てこもつてしまつた。組合員等は少くとも団交日時の取決め位はするよう事務所の外から呼びかけ、団交員たる申請人加藤ら執行部もこの点の話合いに限つて入室を求めたが応答がなかつた。当時の雰囲気から見てとにかく、少くともこの点の話合いを会社としなければその場の収拾はできないと判断されたので申請人加藤は女子職員が退出する際事務室内に入つた。そして、その後一般組合員も入室していたが、小川常務は、依然として組合の申入を拒否し続け、午後六時三○分頃になると右申請人らに退去を命じた。しかしその直後、右申請人に対し、一般組合員を退去させれば話合う旨答えたので、直ちに右申請人は、右の要望どおり一般組合員を退去させた。その頃、突然制私服の警察官八名が同所に到着し右の話合いは物別れとなつた。これが同日の真相である。組合員多数が集合していれば、室内が多少騒然とする位のことはあろうし、また会社の不誠意に対し非難の声が出るのも已むを得ないことである。しかしすべて争議を解決するという目的から出たもので右申請人らはじめ組合員に他意はなく、小川常務らの誠意のない態度に憤慨することはあつても同人らに暴行、脅迫をなすなどの意図はなかつたものである。以上のとおり右申請人らは、組合の決議に従い争議解決のための労働組合の正当な行為として団交要求を行なつたものであり、何ら就業規則違反として責任を追及される節合はない。

申請人らは、同年一一月四日午後一時から午後五時までの間就業規則第四五条但書所定の会社の許可を受けないで就業時間中職場委員会を開催し組合活動をした。

申請人ら全員

ハ 被申請人主張の日時に委員会(職場委員会ではなく、職場委員執行委員合同委員会である。)を開催したことは認める。しかし、これは無許可の就業時間内組合活動ではない。従来組合役員が就業時間中に職場委員会、執行委員会、合同委員会に出席する場合には、予め組合用務につく旨の届出を会社にするだけでよく、会社は、異議なくこれを承認してきたものであり、これは、労使間の確立された慣行である。事実、組合は、昭和三八年一月一日から昭和四〇年一二月一七日まで約四年間に就業時間内における組合活動として前後七六回に亘り半日又は一日の職場委員会等を開催してきたが、その間出席組合員はすべて右の届出をし、届出を受けた会社は出勤簿の該当者欄に組合用務の印を押捺してこれを異議なく承認してきた。本件合同委員会の際には、申請人加藤は、同年一一月二日に組合を通じて組合用務の届出をし、会社は、一旦これを受理して右の方法によりこれを承認していたにも拘わらず、その後俄かに組合用務は認めないと云い出したので、右申請人已むなく私事休として欠勤したうえ前記会合に出席したものである。その間何らの手落もない。また、一般に労使間に協定、就業兎則等の定めがある場合は勿論、そうでなくても労働争義が準備されている場合などには労働時間中の組合活動も許容されると解されるところ、本件合同委員会は、年末一時金闘争中の争議準備を目的として開催された会合であり、争議中の緊急な必要に迫られて行なつた組合活動であつて就業規則違反として懲戒処分の対象となるべきものではない。

申請人らは、同年一二月一日午後一時から午後五時までの間、会社の許可を受けないで就業時間中職場委員会を開催し職場を離脱した。

申請人ら全員

ニ この事実については日時の点を除き前記ハの答弁と同様である。

申請人らは、同年七月二九日から同月三一日までの間、上司より命じられた日通倉庫(米子市昭和町所在)への輸送のためのトラック積込作業に従事しないよう他の作業員を煽動して被申請人の業務命令に違背させた。

申請人加藤

同中田

ホ 昭和四〇年七月二九日から同月三一日までの間組合指令により被申請人主張の積込作業を拒否したことは認める。しかし、被申請人主張の業務命令は次の理由により無効のものであつて、右申請人らはこれに拘束されない。即ち、七月二九日の朝会社の森製品主任から、製品班の現場作業員に対し、当日から製品の日通倉庫への運搬、同倉庫内でのはえ積みは日通が行なうことになつたのでトラックの積込み作業のみを従前どおり米子作業が行なうとの通告があつたが、これより先同年六月一五日春季ベースアップ闘争の妥結の際、会社と組合との間に、今後は労働条件の変化、職場の配置転換については事前に組合の意見を充分尊重するという協定(労働協約の性質を有する。)が成立していたところ、右の会社の通告どおり作業すればはえ積み作業員は不要になつて他の職場に配置転換されることとなり、出来高賃制金の下では組合員の給与にも変動を生じ、(特にはえ積み作業ほ割のよいものであつた。)、まさに右協定にいう「配置転換」、「労働条件の変化」に該当することになるので、通告を受けた組合は、直ちに会社の右協定違反行為に抗議し、その理由をただすため取敢えず作業にかかることを中止させ、会社との問で右協定に基づく事前交渉を行なつた。しかし、会社は、右協定は認めながら、日パがストをする組合には作業を委せられないといつているからという理由の説明に終始するのみで早急な解決は望めそうになかつたので、組合は、同月三一日に至り、これを「一応已むを得ないものとして翌日から作業についたものである。以上のように、本件は、会社の協定違反の業務命令に起因するものであるから、申請人らとして職務規律違反に問われるべき筋合のものではない。

申請人らは、日パ米子工場の定めた請負業者の守るべき基準第三一条第一項に基づく、日パ構内への入出門に際し、作業員は氏名札を裏返すようにとの会社の指示を無視し、同年九月九日、申請人ら自身は勿論他の作業員をも煽動して右の指示に違背させた。

申請人ら全員

へ 被申請人主張の日に申請人らが入門に際し氏名札を裏返さなかつたことは認めるが、他の作業員を煽動したことはない。これが職務規律違反事由に該当するとの主張も争う。

同年九月八日、昼休みに会社の神田課長から明日から氏名札を返せとの発言があり、理由は日パからの通達によるということであつた。申請人らの組合が日パの通達に服する根拠もない(申請人らとしてはこのことがあつて始めて請負業者の守るべき基準というようなものがあることが判つた。)ので、とりあえず構内共闘会議(日パ、米子作業各労組、構内日通臨時組合、朝日鉄鋼労組、全日通労組)の意見として、右指示の理由も不明であるため氏名札には手を触れないことを決定し、右申請人ら作業員もこの決定に従つたまでである。その後この問題は日パの保安員の希望によるものであることが判明して解決した。

申請人は、同年九月二五日休憩時間経過後も職場に復帰せず、神田作業課長から注意を与えられたが何ら反省することなく、同年一一月八日、同月一八日にも、右同様怠業した。

申請人加藤

卜 昭和四〇年九月二五日、休憩時間中に申請人が組合活動に関する打合わせをしていて僅かに遅刻し神田課長の注意ですぐ作業にかかつたことはある。その他の事実は争う。

申請人らは、同年五月一六日午後四時から翌一七日朝まで日パ構内製品倉庫脇に車輌一一台を放置し、前記請負業者の守るべき基準第一三条に基づく会社の指示に違背した。

申請人加藤

同中田

チ 被申請人主張のとおり車輌を日パ構内に置いたことは認める。

昭和四〇年五月一六日、組合は、午後四時から翌朝午前八時までストをした。従つてスト突入と同時に作動していたトラックが停止したのは当然であり、被申請人は、まさしくスト行為を非難するものであつて、その主張は失当である。

申請人らは、同年五月二三日午後三時から午後五時まで日パ製品倉庫脇に日パ工場長の退去命令を無視して申請人らが煽動して集結させた多数作業員とともに坐り込んだ。

申請人加藤

同中田

リ 本件事実は争う。

尤も、被申請人主張の日時頃、組合がストを行なつたことはある。

申請人らは、同年一二月八日午後一時一五分から午後二時五〇分までの間日パ製品倉庫東側トラック積込ホームに作業員多数を煽動して集結させ、自身らもこれに加わつて境港海陸運送株式会社のトラック積込作業を妨害し、かつ、日パ工場長の退去命令に従わなかつた。

申請人ら全員

ヌ 本件事実は争う。

申請人らは、昭和三八年四月一九日午後三時から午後五時までの間、日パ構内に不法に侵入し、他の作業員を教唆煽動して自身らもともに日パの退去命令を無視してピケであると称して日パ製品倉庫及び一号マシン室の入口を塞ぎ、非組合員長谷川、江原の腕を掴むなどして業務を妨害した。

申請人加藤

同松本

1乃至5に関し。被申請人主張の不法侵入、不退去、暴行、煽動等の職務規律違反の主張事実は否認する。

右1ないし5については、いずれも被申請人主張の日時に申請人らの属する組合がストを行ない、申請人加藤は、当時その執行副委員長として他の組合員ともに組合の決定に従い被申請人主張の場所附近で作業を放棄し、その場所で争議行為を行なつたもので、その手段方法において何らの違法もない。本件のピケを行なつた場所は日パ構内ではあるが、被申請人会社の作業場であり、スト突入直前まで申請人らがそこで就労しており不法に侵入したものではない。また、スト突入後金社及び日パがスト破り要員又は管理職を以て代替作業を遂行しようとするのを防ぐための手段としてピケを張るのは、組合がストを実効あらしめるために絶対必要とする争議手段で為り、また、そのピケの態様も、平和的説得の範囲を著しく超えたものではなかつた。日パとしても構内に被申請人会社の作業場を設置している以上このような組合の争議行為を当然忍容する義務がある一方、同会社内部の争議について直接介入しうる権利はなく申請人ら組合員に直接命令できる関係にもない。従つて日パの退去命令といつてもその実質は説得的行為の意味を有するに過ぎず、申請人らに対し何らの拘束力もない。それ故右申請人らがこれに従わなかつたとしても職務規律違反などといわれる節合はない。

また、第三者のトラック入門阻止についても特に実力を行使したものでもなく、当初組合側からピケラインの通行を許されたトラックが二回に亘り運搬した資材が争議組合員に対するスト破りの目的を有するものであることが判明したので三回目の入門を説得により阻止したに過ぎない。

申請人らは、同年五月六日午前一〇時頃から日パ構内製品倉庫内に申請人らの煽動した多数作業員とともに不法に侵入し、またその後同構内芒硝倉庫にも乱入し、日パの退去命令にも従わずその業務を妨害した。

申請人加藤

同松本

申請人らは、昭和三九年五月八日午前九時五〇分から午前一一時五〇分頃まで第三者である日パ構内製品倉庫に同人の煽動した多数作業員とともに不法に侵入し、退去命令にも従わなかつた。

申請人加藤

同中田

申請人らは、昭和三九年五月二六日午前七時二〇分頃から午後三時五〇分頃までの間、日パ構内に他の多数作業員とともに不法に侵入して坐り込み第三者である日通米子支店のトラック入門を阻止した。

申請人加藤

同松本

申請人らは、昭和四〇年一二月二〇日午後三時一五分から同三時三五分頃まで、日パ構内製品詰所に他の作業員とともに不法に集結し、日パ米子工場長の発した立入禁止、退去命令に従わなかつた。

申請人加藤

同松本同中田

昭和三九年五月一五日、会社は、午後六時三〇分頃から組合との間に団交を開始し、午後一一時過ぎ頃、組合に対し深夜の団交打切りを申入れたところ、組合側団交要員である申請人らは、団交の継続を強く要求し、作業員五、六〇名を煽動指揮して、翌一六日午前三時三〇分頃まで、団交の場所である事務所を包囲し、アコーデオンを弾き労働歌を合唱する等威力を示して、会社役員及び団交要員ではない非組合員までも事務所内に軟禁した。

申請人加藤

同松本

6 同日は深夜まで団交したことは認める。

しかし、被申請人主張の軟禁の事実は争う。同夜午後一一時頃、会社は団交の一時休憩を申入れてきたので、組合もこれに応じたが、休憩中会社から一方的に団交打切りを通告してきたので、組合は、再開もせずに一方的に打切り通告をした会社の不誠意を非難しただけであり、その後団交再開のうえ同月一八日に次回の団交を行うことに合意ができ同夜は解散した。

申請人らは、昭和四〇年六月一二日午後○時三〇分頃から午後五時一〇分頃まで、自己らの煽動した他の作業員とともに会社に団交を要求して事務所を包囲し、非組合員を事務所内に軟禁し、以てその作業を妨害した。

申請人加藤

同中田

7 争う。

申請人らは、昭和三八年一月一五日午後一時から午後五時まで、就業規則に定める許可を受けず組合執行委員会を開き、組合活動をし職場を離脱した。

申請人加藤

同松本

89 被申請人主張の日時にその主張の委員会を開催し申請人らがこれに出席したことは認める。

しかし、これが職務規律違反にならない事情は前記ハの答弁と同様である。殊に、8記載の執行委員会開催については、当時会社は、未だ法人設立登記も完了していない事実上の会社であり、昭和三八年一月一日より、その前日まで申請外松井組なるものが行なつていた業務を承継し旧松井組労働者全員を一応引継ぎ雇傭したものの未だ雇傭契約も正式には完了していなかつたのであり、当時は、会社、組合ともいわば創業の時代であり、組合としては、旧松井組労働者全員の再雇傭と旧労働協約、就業規則の引継ぎ、労働条件の確認等種々の要求を会社に呈示交渉中で右執行委員会はこれらの緊急の必要があつて開催したものであるから、右委員会の開催は、かりに会社の許可なくされたものであつたとしても違法ではなく、これに出席した申請人らも職務規律違反に問われるべき筋合ではない。

申請人らは、同年四月一六日午後一時から午後五時まで、前記8同様就業時間中無許可で組合執行委員会を開催し職場を離脱した。

申請人加藤

同松本

10

申請人は、同年九月一一日午前中、赤松課長代理及び服部作業課長から、バタ材処理のため会社が傭車していた日通シヨベルローダー二台が故障したので会社のシヨベルローダーを運転していた申請人において、代わつてバタ材の運搬作業をするよう命じられたにもかかわらずこれに従わなかつた。

申請人加藤

10 申請人主張の命令に従わなかつたことは認めるが、その他の事実は争う。

労働条件の変更については事前に組合と協議する旨の協定が成立していたことは前記ホの答弁のとおりであるところ、会社が同日申請人に対し日通のシヨベルが故障したことを理由に日通への出向作業を命じたので、同申請人は、右協定に基づいてその理由をただし納得のゆく説明があるまでは被申請人主張の命令に従わなかつたのである。申請人が出向すれば関連作業の能率が下がり出来高賃金制の下ではその作業に従事する他の作業員の給与に影響し、その範囲は申請人一人にとどまらないからである。

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